大胆な言葉

giilin11jkk

2011年01月29日 18:12

長い長い休みが明け、

また今日から学校への往復が始まる。

生ぬるい暑さの中、真由は杏奈と並んで歩いている。

その歩みはいつも以上に遅く足取りは重い。

「あーあ。あっという間に終わっちゃったよー。」

深い溜息を付きながら杏奈が言う。

「本当だね。なんで夏休みって早いんだろうね。」

頷きながら真由は杏奈に同意する。

「もっともーっと遊びたーい!」

周囲の人が一斉に振り返る程の声で杏奈が叫ぶ。

「ちょ、ちょっと杏奈。恥ずかしいよ……」

真由の方が恥ずかしさで顔を真っ赤にさせていると、

杏奈は手を合わせて真由に軽くウインクした。

「それにしても良かったね、誤解が解けて。」

杏奈が真由の頭をぽんと叩きながら言った。

夏休み前はこのまま解けないと思っていた圭輔の誤解。

それを圭輔の妹である詩織のお陰で解くことが出来た。

詩織には感謝してもしきれない程だ。

「うん、本当良かった。」

詩織を思いながら真由は言った。

「そういえばさ。」

杏奈が目を輝かせながら真由を見つめる。

「なに、杏奈。いいことでもあったの。」

真由が不思議そうに杏奈を見つめ返す。

真由の言葉に杏奈は激しく首を振りながら言葉を続ける。

「“あった”じゃなくて“ある”の。

 今月、修学旅行があるじゃん。」

真由は杏奈の言葉にいまいちピンとこない。

「修学旅行……?」

杏奈の言う通り、

毎年9月に入ると3年生は修学旅行へ行くことになっている。

今年も例年通り行われる。

「それがどうしたの。」

ぼんやりしながら真由が尋ねると、

杏奈が真由の両頬を叩く仕草をしながらはっきりと言った。

「真由!香坂君と二人きりになれるチャンスよ!」

杏奈の大胆な言葉に真由の鼓動が一気に早まる。

「二人きりって……」

真由の顔がみるみるうちに赤く染まる。

その姿を見ながら杏奈が真由の背中を押すように、

「絶好のチャンスなんだからね。」

と言った。